少しでも元気を出してもらいたい


こんなことで役には立たないかもしれないけれど


しかし問題が……どうやって渡すか


みんなの前で堂々と渡すのも冷やかされて嫌だし


こっそりって言っても蒼には常に浅井がついてるし


やっぱり次の移動教室の時にこっそり机の中に入れるしか……




「ん!!もうこんな時間!…私、次の音楽の準備しないといけないから先に行くね!」



千都は音楽係
準備のため一足先に教室に戻ってしまった


咲良は1人ポツンとお弁当を食べることに



別棟への渡り廊下で食べていた咲良は、心地いい風に気持ちよくなり、眠くなってきた


すると本館から向かってくる人影


ドキン……


蒼だった


咲良を見つけると蒼は渡り廊下にきて、隣に座った



「…………」


「…………」



隣に座っただけの蒼は喋ることもなくただそこにいた


仕方なく咲良が会話を作る



「どうした?」



「………ん~……」



話す気がないのだろうか

何しに来たのだろうか


なんなんだ、と疑問に思ったが、今がチャンス


例の物を手に取り、ボーッとしている蒼に突き出した



「……食べる?」


「…………なに?」


「昨日、お父さんに作ってもらったの」



蒼はアルミホイルの包みを開け、中の出汁巻き玉子を一口食べた


「…………うま…」


あまりの美味しさに、元気なさげだった顔はみるみるキラキラし始め、次々と口に運んだ


その表情を見た咲良はすごく嬉しくなり、気持ちが込み上げ満面の笑みで蒼を見つめた



「…………やば……」