チャプン…………



咲良はお風呂に浸かりながらまた考えた


さっきは突然、電話を切ってしまい美紀子に申し訳ない


でもあれ以上話をしていると怖かった


蒼のことを考えると知らない気持ちを知ってしまいそうで怖い



ただの友達なのに、どうしてこんなに苦しいのだろう


私はどうしたらいいんだろ……



________________次の日



キーンコーンカーンコーン………



「お昼だぁ~!」


千都がチャイムと同時に咲良のもとに来た


咲良は出しっぱなしの教科書など終い、鞄からお弁当を出した


「どこで食べる?」


今日はお弁当の日

好きな場所で食べでもいい日でもあった


2人は静かに食べたいため、人気の少ない美術室がある別棟に



「わあ~美味しそう!」



千都が咲良のお弁当を見て言った


咲良の家は共働きのため、自分でお弁当を作る


父は板前、母は工場などを掛け持ちして生計を立ててる


なのでだいたい親は家にいなく、料理は自然と身についていった


その事情は千都も知っている


「ん?そっちの包みは何?」


咲良のお弁当とは別にアルミホイルに包まれた謎の物体



「な、なんでもないよ!ゴミだよゴミ!」


そう言ってささっと隠した

不思議に思いながらもしつこくは聞かない千都


そういう気遣いがまた付き合いやすく、いい友達を持ったなあと咲良は実感



アルミホイルの中身は実は出汁巻き玉子と茶碗蒸し


夜中に帰ってくる父親に無理言って作ってもらったもの


昔からこれを食べると心がホッとして温まる


咲良は蒼に食べてもらいたくて持ってきたのだった


咲良に出来るのはこれくらいだから