『ど、…どうしたの?』


耳なりが少し収まりもう一度、耳を受話器に当てた


美紀子は相変わらずガーッと猛スピードの車のように話し始める



『今日、蒼ってば部活を辞めたんだって!』


『え!?』


『浅井から聞いたんだけど、柔道部は仲良くしてた先輩に無理やり入れられた形だったらしく、本当は小学校からやってる野球をやりたかったんだってさ』


実は浅井は野球部

蒼と浅井は小学校からずっと一緒に野球をやってきた


しかし一つ上の仲がいい先輩に部員が少ないからという理由で半ば無理やり入部させられた


『だから今度は野球部に入りたいって先生に言ったけど、中途半端にやるなって怒られたらしいよ』



“それで元気なかったのか………蒼、お人好しな部分あるからなぁ”



この数ヶ月で蒼の中で葛藤があったのだろう

そしてやっぱりやりたいことをやりたいという結論に


今まで一緒にいて、悩む素振りも見せなかった


蒼は聞かない限り話さないタイプだから


咲良はもっと頼ってほしいと思った


知らないところで蒼が苦しんでいるのは嫌

そしてそれに気づかない自分が嫌だった



ドクン………





『………美紀子ちゃん……ごめん。お風呂入らないと』



そう言って速やかに電話を切った