美術部は部員が少なく、しかもほとんどが幽霊部員


だいたいは一人で美術室で作業をしている

それが逆に居心地がよくて、静かにのんびり絵を描くことができる



今日も一人で絵を描いていた

今は夏ということでそれにちなんだテーマで描く


咲良は夏の空を見ながらぼんやりと絵の具を重ねる



「いいわね」


すると顧問の先生が入ってきて絵を見て言った

女の先生で穏やかで、真面目にやってる咲良に良くしてくれる


咲良はその先生が大好きだった



「夏休みには統計グラフも始まるし、体育祭に飾る絵も描かないとで忙しくなるわ」


のんびりな美術部もたまに忙しくなる時がある


そういう時は幽霊部員も集まり、みんなで作業をするのだ


「さあ!今日はその辺にして帰りなさい」


「は~い」



先生はその返事を聞いて職員室に戻った


咲良は後片付けをして、美術室に鍵をして出た


美術室は教室などがある建物とは別で、渡り廊下を通って別棟にあった


他にもパソコン室やあまり使わない教室が一緒になっていて美術室はその建物の二階


咲良は階段を降りて渡り廊下を歩き職員室に鍵を返しに行った


他の部活はまだ終わってないようで廊下の窓からは野球部やサッカー部が動いてるのが見える


咲良は鍵を戻すとまっすぐ下駄箱に向かい靴を履き替えようとすると


「あれ?」


咲良の隣はもちろん蒼で、蒼の靴がある


特に不思議なことでもないが、蒼は柔道部

柔道部は武道館で部活のはず

武道館には上履きでは行けない


“まだ教室にいるのかな?……日直?”


そう思ったが、よく考えると日直だったら咲良も日直のはず


疑問に思ったがもともとあまり気にしないタイプな咲良は「ま、いっか」と靴を履いて帰ろうとした