ところで現在時刻は7時半。

台所の方からは母さんのせかす声が聞こえてくる。
ついでに家族の誰かの足音も。

焦った俺は、キノコを掴んで引っ張ってしまった。

あ、
そもそもこれって抜いていいもん?


グロ系ホラーのように体のどこかに癒着してない?!
何か取れちゃ、剥がれちゃいけないものがくっついてたらどうしよ?!

ブチッという音が聞こえるわずかな間に、
俺の頭は恐怖に支配されていた。


ガチャっと洗面所のドアが開けられる。


「何それ、アンタ何でキノコなんか持ってんの?」

入ってきたのは姉ちゃんだった。

反応からしても俺の頭皮は無事らしい。
そしてやっぱりキノコは幻覚じゃない。


「……何でだろうね?」

俺だって解らないよ!
鏡で見ても触ってみても、もう頭には普段通りに髪の毛が生えているだけだ。