ふわっと何かが頬に触れた気がして目が覚める。


「な…に…?」

「あ、起きたか?」



その声にぼんやりしていた頭が覚醒する。

目を開けたその先にいる人物に静奈は固まった。


「えっ!?どうして…」

「諏訪さんから様子見に行くように言われたんだ。具合悪いんだって?大丈夫か?」



ベッドの横の椅子に座ったまま高柳は静奈を覗き込む。


静奈はとっさに目を逸らした。
高柳をまともに見ることなんて出来なかった。

なんで…。



「…どうした?」

「いえ……。」



まさか高柳が居るなんて思わないのだから上手く表情が作れない。

静奈は枕に顔を寄せる。 言葉が続けられない。

そんな静奈の額を高柳の大きな手が優しく触れる。
思わずピクンと驚いてしまう。



「少し熱っぽいな。早退しても良いって言ってたぞ。どうする?」



熱っぽいのか。どうりで具合が悪いわけだ。

静奈はそっと目を閉じる

そうすれば高柳を見ずに話が出来る。



「少し…寝てから帰ります。もう大丈夫ですから高柳さんは仕事に戻って下さい。」

「嫌だね」

「え?」



間髪入れずに言う高柳に静奈はパチッと目を開ける。


嫌だねって言った?