「でも、高柳だって…って静奈大丈夫!?」



壁に寄りかかって下を向く。なんか本当に具合が悪くなってきた。

貴子に休んでろと言われ、遠慮なく医務室へと向かう。

今は仕事なんて出来そうになかったし。

医務室に着くまで頭の中は婚約の言葉で埋まっていた。


本当により戻してたんだ。婚約まで…。

もう本当に諦めるしかなくなっちゃった…。



「静奈ちゃん?」



フラフラ歩いていると後ろから名前を呼ばれた。


「どうしたの!?」

「上村さん…。」

「具合悪いの?」



驚いた様子の上村は駆け寄ってきて、静奈を支えながら医務室へ連れて行く。

医務室は誰もいなかった。整ったベッドに誘導され座る。



「大丈夫?」

「すみません。大丈夫です。」

「無理すんなよ。顔色悪いよ。」



静奈は黙って俯く。その様子を見て上村が言った


「もしかして高柳の噂聞いたの?」

「…はい」

「そっか。それでか。噂になってるもんな。Kグループの社長の姪だもんな。つくづく羨ましい奴だぜ。」

「昔付き合ってたそうです」

「…へぇ。それは知らなかったな。」

「より戻すのは自然なことなんですよ。」