その噂はあっという間に広まった。
「静奈、知ってた?」
「あ、貴子先輩。おはようございます。一体何をですか?」
静奈が秘書課に入るなり、貴子は怖い顔で聞いてきた。
「高柳の噂。」
「噂?」
「高柳、この前来ていたKグループの社長の姪と婚約したって。」
「…え……?」
婚約…?
高柳さんと……
「友香さん…が?」
「2人で会っている所もよく目撃されてるみたい。昔付き合っていたらしいって。」
そうなんだ…。婚約したんだ…。
ってことは、よりを戻したの…?
そういうことだよね?
「大丈夫?静奈?」
「え?大丈夫ですよ」
心配そうに声をかける貴子ににっこり笑って見せる。
しかし貴子は眉間に皺を寄せる。
「無理しないの。顔色悪いよ。アンタ、高柳のこと好きなんでしょう?」
「貴子先輩…」
「高柳と話したら?」
「何を話すんですか?私たち別に付き合ってるわけじゃないんですよ。」
そう。静奈が口を出すことではない。