安心したようにほほ笑んだ先輩は、あたしの手を握り直してゆっくり進んでくれる。



10分くらい過ぎると、岩に打ち付ける波音がだんだん大きく聞こえてきて。


あたしは思わず、ぶるっと身震いした。



「あの、先輩」


「うん?」


「……ホントにありがとうございました。助けてくれて」



しぶきの音が、おぼれた時の恐怖を連れてくる。



「あのとき、先輩が発見してくれなかったらあたし……」



この暗がりよりも、
海に引きずり込まれていく、あの感覚の方が断然怖い。