きっかけは単純なものだった。


「宮下!」


「長谷川くん?」

下駄箱で
彼が息を切らしながら、私に声をかけた。

「長谷川くん、どうしたの?
まだバスケ部 部活中じゃぁ?」

長谷川くんって
確かバスケ部の中でも
特にうまい方だった気がする…
部活も
毎日いってるみたいだしーーー

委員会が一緒だったから名前は知ってるけど、

でも
よくカッコいい!!!って女子に噂されてるっけ…。



「あっぶねー、
宮下さ、ちょっといい?」

すっかり息が整った少し低めの声。


「うん、大丈夫だよ。」


それにしてもなんだろ……


長谷川くんは2組で、
私は3組だから、
特に何も話したことないし……

肝心の委員会だって、
1年の―――2学期だったっけ。



「実はさ、
今度試合があるんだけど、
宮下、習字習ってるじゃん?」

「え?


な、なんで知ってんの!?」

習字習ってることは、
親友のちーちゃん、みいぐらいにしかいってないはず……


隠してる訳じゃないけど、
特に言うことでもないし、あまりクラスの人も知らない。



なのになんで
クラスが違う長谷川くんの耳に入ってんの~!?


「なんでって、
委員会の時、黒板かいてたやん。

あん時、すげー字がキレイやなぁ~って感心してもうてさ。
俺、字きたねぇから尊敬!」

彼は笑いながら、
手に持っていたノートを開く。


「ほら見ろよー
まじセンスねぇ字だろー?」


そこには
「バスケ部」という大きな字が書かれてあった。


確かに
ちょっと形が悪くて、特徴ある字ーー…



でもーー

「私は好きだな。」



「え?」


「なんていうのかな、
すっごく堂々としてて、、
でもどこか優しさがあって……。



長谷川くんって
優しい人なんだろーなぁって伝わってくる。


だからさ
この字、私は正直で好き。




私はニッコリ笑った。


「正直って…」
彼は笑っていた。



「しょ、正直なの!!
ちょっとおかしいかもだけど。。」


「ハハッ!」


その時

彼に太陽の光が当たってーー


さっきから見せる笑顔が




誰よりも



太陽よりも






眩しく光ってみえた。





それに反応するかのように

西の空は





赤く染まっていたーーーー