「……なんてな、やっぱり俺は、そこまでいい奴にはなれねーよ」
「トーマ?」
「……行くな」
「え?」
「どこにも行くなよ!!」
私をぎゅっと抱き締めたままそう叫ぶトーマに、胸が熱くなる。
別れたくない。
消えたくない。
今、目覚めた威鶴に代われば、私は再び眠りにつくだろう。
でもそれは、私たちがずっとずっと望んで来たこと。
『依鶴』の一歩。
トーマ、私のしようとしてることに、気づいてるんでしょう?
だから行くなって、言ってくれてるんだよね。
それでもトーマ、これが私たちの役目なの。
「トーマ、私は……消えるかもしれないけど、同時に元いた場所に戻るの」
「依鶴っ……」
「だから私は、トーマが近くにいれば、いつでもトーマのそばに居られる。それはとっても幸せなこと」