遠慮するがトーマにうまく言いくるめられ、ワタワタと残りの支度をして、トーマと家を出た。

と、欠伸をしたトーマにふと少し考え、隣を歩く彼を見る。



「眠いですか?」



私の家に来てから少し寝たと言っても、3時間くらいじゃないだろうか?

それなら当たり前に、眠いと思う。



「寝る前よか意識ハッキリしてる。悪いな」



以前来た時も、トーマはこうして謝ってきた。

その時も確か……寝た事に対して。



「気にしないでください。眠い時は寝ていただいて構いません。お仕事、大変でしょうからね」

「悪いな」



そう言ってトーマは、私の頭に手を乗せた。





その瞬間、まるでスイッチが入ったように、トーマを意識し始めた。

隣を歩いている、歩幅を合わせてくれている、車道側を歩いてくれている、20センチの距離、頭をなでてくれたその手。

初めて気付いた。



私、私──……初めて女の子として扱ってもらっている。