時計の針はカチカチと音をたててひたすら時だけが過ぎた。



ハルは眠れなかった。


何時ごろだろうか。
彼女が台所に水をのみにいき、
リビングルームの電気をつけたとき…。







彼女の父親は宙に浮かんでいた。
いや、吊るされているという方が正しいだろう。
ブラブラと体を揺らしながら、
床には椅子が転がっていた。



ハルは頭がいい。
これが父親が死んだという意味になることを
もうすでに冷静に頭のなかに取り込んでいた。



『忘れ物だよ。』
彼女は自分を指差して言った。




もう、頼れるひとはいなかった。