すると、スタスタと背中に

誰かの気配を感じる。


誰だか、なんてすぐに分かった。

この部屋にはサクト先輩とあたししか

いないのだから。


右腕の手首に、温もりを感じる。

サクト先輩に掴まれていた。


そのままグイッと引っ張られる。

背後、サクト先輩がいる方に。


「わっ…。」

フワッと心地いい香りに

包まれたかと思うと、

あたしは背後から

先輩に抱き締められていた。


「ラル。」

先輩はあたしの肩に顎を置く体制で、

必然的にあたしの耳元に吐息が

かかるような、そんな体制だった。


「…っ。」

どうしよう。心地いい。


「なんて顔してんだよ。」


「…えっ?」

夏でも、心地いいこの体制は、

気づけばあたしの心臓を

激しく動かしていた。