連れてこられたのは、
シーツがたくさんある部屋。
この部屋何てゆーんだっけ。
《バタンッ》
後ろでドアが閉まる。
「さて…。」
背後から透き通る
テノールの声がする。
不覚にもその声に胸が打つ。
「さっきの続きだが。」
「あ、あたしは
試合には出ませんからっ。」
とりあえずこれは譲れない。
「………だから、
何で出たくないんだよ。」
口調は若干呆れてるのに、
表情は真剣そのもの。
そんな顔で見ないで欲しい。
何故か自分が惨めに感じるから。
その澄んだ目に映って良いほど、
あたしはいい人間じゃないから。
「…。」
あたしは、喋らない。