「あ、泣かないで。」
涙を流す私を見て、石垣さんは慌ててなだめてくれた。
「あの、どうして別れてほしいんですか?」
私の質問に、少し困った顔をしながらも答えてくれた。
「あいつさ、優那ちゃんのこと、
すっげー心配してんだよ。
あいつのファンの子もそろそろ優那ちゃんの存在に気づくだろーって言っててさ、
練習の時だってずっと優那ちゃんのこと、
考えてんだ。
このままじゃ、あいつダメになる。
プロになるっていう夢、
叶わなくなる。
それぐらい最近、気が抜けてんだ。
こんなこと言っちゃわるいけど、
優那ちゃんの存在が、
大翔をダメにしてる。
これはあくまでも
俺からのお願いなんだけどさ、
大翔の為だと思って
別れてくんないかな?」
確かに、そうかもしれない。
だけど、やっぱり私は大翔が好き。
「少し、考えさせてください。」
胸が苦しかった私は、そう言うのが精一杯で、
すぐに家への、帰り道をとぼとぼと歩き出した。