今まで私が座っていたあたりに座る常陸の前に立ち、私はドライヤーのスイッチを入れて濡れた髪を乾かし始めた。
(…二回目、だなぁ)
前にも一度こうして乾かしてあげたことがあった。まぁ、あのときは常陸も具合が悪くてあんまり覚えてないと思うけど――…
「二度目だな」
「…え」
「こうやって世話をしてもらうの。…やっぱり、気持ちがいい」
思わず常陸を見下ろせば目を細めてトロリとした表情をしている。
「お、覚えて…?」
私がそう言うと常陸はこくりと頷く。
「あぁ。…今思えばこのときもう透子が好きだったんだろうな。“好き”がどういうことかわかってなかったから、どこかおかしくなったんじゃないかと思っていたが」