―――時間はいつの間にか夜を迎えていたらしく、その後私は日向さんが運んできた夕食を食べ何日ぶりかのバスタイムを楽しんだ。
魔界の空気に慣れていない私でもこの屋敷内なら自由に歩けるようにしてくれたらしく、私は数日ぶりに湯船に浸かってリフレッシュして。
自分の唇に触りながら、ぼんやりと常陸のことを考えていた。
いつ呪いが解けたのか、とか。どうして会いに来てくれなかったのか、とか。
聞きたいことは山ほどあった、けど。
「………いつか聞けるかな」
無理には聞きたくない。
それで常陸が傷つくならなおのこと。
一人ごちて、浴室をあとにした私が向かう先は屋敷の一番奥。
私が近づくとやっぱり勝手に扉が開いて。
その部屋の中では常陸がなにやら難しい顔をして書類とにらめっこをしている。
その姿ですらも凛々しくて綺麗で、私は声をかけるのをしばらくためらってしまった。