試合がいよいよ明日という日に。
練習終わって解散した後、
「PK練習、付き合って。」
そうやって坂本君を引き留めた。

『俺、キーパーちゃうねんけど。』
そう答えながらも、坂本君はゴールに歩き出した。

「5発にするわ、真剣に勝負してぇ。」

俺はボールを用意して、離れた場所から叫んだ。

真正面で向かい合う坂本君は、片手を上げて合図した。
低い姿勢になって、俺から一瞬も目を離さない。

チラッと向こうを見たら、玲が立ってた。
黙って成り行きを見てる。

俺はゴールに、


いや違う。

坂本君に向かって、力の限りボールを蹴った。