焼けて跡形もなくなった家の前で、俺はただ茫然と立ち尽くしていた。
ザッ、ザッ……
草を踏む音が、だんだん近づいてくる。
だけど、俺は顔をそちらに向ける気力もなかった。
俺の頭の中は、寂しさ、無力感、絶望…。
すぐ横で、足音がとまる。
次いで聞こえてくるのは、男性の低い声。
『アキト君、家に…来ないか?』
躊躇いがちに声をかけてきたのは、レイのお父さんだった。
『………。』
顔は向けず、ゆっくりと顔を横に振る。
『…そうか……。』
そう答えると、足音はまた遠ざかって行った。
護れなかった。
家族を、大切な人を…。