香蘭たちは国境を抜け、香の城下町を歩いていた。



見張りが多いだろうと踏んでいたのに、すんなりとここまで来ることができて肩すかしをくらった気分である。


逆に兵を一人も見ないことが、少しばかり不穏だ。




香国の城下町はなかなか活発な街で、人々は忙しそうに行き来している。


そんな彼らの会話に耳をすますと、耳を疑う情報が飛び込んできた。



「国王様がお倒れになったそうだよ」


「突然の病だとか」


「今は宝焔様が政務を執り行っているそうだね」


「ああ、宝焔様なら任せておける」



香蘭たちは顔を見合わせた。



香王が倒れたことなんて聞いていない。


ハルも、華京はそんなことは言っていなかったと首を横に振った。