「これからどうするんだ?ここにいても、見つかるだけだぞ」
憂焔の言葉に、秋蛍が顔を向けた。
「宮へ戻る。華京様に援助を頼み、それから香へ」
「それは駄目だよ」
そう言って、珀伶が立ち上がった。
「鏡国の宮の周囲に、兵を送ってある。香蘭を探すためのね」
そこへのこのこ行ったら、見つかってしまう。
憂焔は舌打ちし、珀伶を睨んだ。
もう珀伶を気遣う気などさらさらないようだ。
「なんてことしてくれてんだ、馬鹿兄貴」
「僕はきみの兄でもないし、あそこに兵を張らせたのも僕じゃない。きみの弟」
その言葉に、憂焔は顔色を悪くして黙り込んでしまった。
ハルは憂焔を気遣うように見上げて、秋蛍の着物の袖を引っ張った。
「それなら、あたしが華京のところへ行ってくる。あたしなら、鏡を使ってあっちへ行けるから」
「そうだな。任せたぞ、ハル」
秋蛍が頷くと、ハルは大きく目を見開いて、それから腕で自分を抱くようにしてぶるっと震えた。