「そうです。二つにわかれていたので姿を現すことはできませんでしたが、いつもお見守りしていました」


「ごめんね、あたし気づかなかったよ。こんなに近くにいたなんてねー」


「さすがハルだな。間抜けっぷりが輝いている」


秋蛍がハルの頭を鷲づかみにして、少し怒ったような顔をしている。


「う、だって、感じる力が半分だけじゃ…。その辺にある鈴でもたまにあることだし…」


「まさか香壺も近くにいるなんてことはないだろうな」


「いないよ!たぶん」


「たぶんってなんだ」


秋蛍は呆れてやっと手を離し、痛みにハルが呻いている。



香蘭はいつも通りの二人のやりとりにため息をつき、ふとトオルの方を見ると、トオルがじっと珀伶を見ていることに気づいた。


「あの、珀伶様」


トオルは珀伶の側へ行き、彼を見上げた。


珀伶はまだ状況を理解していないようで、突然現れた少女に声をかけられて戸惑いを隠せないでいる。



珀伶には説明が必要だと思った香蘭は、トオルの肩に手を置いた。


「お兄様、この子は‘約束の鈴’の化身よ」


「鈴の化身?」


「お兄様が持っていらした鈴は三つの宝のうちのひとつだったの。私も驚いているわ」


「はい。それで、珀伶様にわたしは憑くことになっています」



「憑く?」