「え、でも、お兄様、何を信じたらいいのかわからないって。それに、約束って?」


珀伶は香蘭に手を伸ばし、彼女の髪についている鈴に指を滑らせた。


「何を信じたらいいのかわからなかったのは本当。でも、香蘭に渡した鈴に誓ったんだ。何があっても香蘭の味方だってね。混乱はしてても、香蘭の味方についとけば間違いはないだろう」


にこりと笑う珀伶に、香蘭は言葉を失くして間抜けに兄を見上げた。


「とんだバカ兄だな」


後ろから聞こえた秋蛍の言葉に、もっともだと心の中で頷いたのは香蘭だけではない。


珀伶は秋蛍の言葉に反応することもなく、そっと懐に手を差し入れた。


「これは王家に伝わる鈴で、本当は二つの房でひとつなんだ。香蘭に半分渡しておいたんだけど、香蘭が鈴国を離れてからもう半分の様子がおかしくて」


そう言いながら珀伶が懐から取り出した鈴に、ハルがぴくりと反応して、二人の側へ風のように飛んできた。


「ちょっと、それかして!」


驚く珀伶の手から鈴を奪い取り、香蘭の髪からも鈴を外した。


「ハル?」


「いいから、かして」