「私と憂焔は、香国に向かう途中で鏡国の者に襲われはしましたが、それは香王が謀ったことなのです。香王が鏡の王女を嵌め、私たちを亡き者にし、それを口実に鈴と手を組み鏡を滅ぼす気でいたのです。現にお兄様はそのつもりで動かれていたのでしょう?」


珀伶は静かに頷いた。


「確かにその通りだ。このまま香蘭を鈴へ連れ帰り、香とともに鏡を攻めるはずだった」


「やっぱり。そして、もうご存知だとは思うけど、私は巫女なの。私をうまく使えば、三国統一を成し遂げることもできるらしいわ」


「それで、香はお前を欲しがっていたのだね」


「そうなのね」



やはり、香国は香蘭を捕え、利用するつもりでいる。



それはきっと、香蘭にとっても、珀伶にとっても…、秋蛍や華京にとっても、よくないことだ。



「香がこれから何をする気でいるのかははっきりわからないけど。私にはやるべきことがある…。そんな気がしてならないの」



いつからそう思っていただろう。



秋蛍やハル、憂焔と過ごすうちに、香蘭の中で、何かが香蘭自身に訴えかけてくるようになって、知らず知らずのうちにそれに従った行動をとってきたような気がする。





「だから…、お兄様」