憂焔が唇を噛むと、ぴくりとハルの肩が動き、二人ははっとしてハルを見た。
「秋蛍!」
ハルが大きな声をあげて、蒼い目をさっと秋蛍に向けた。
「わかったよ!リンの居場所!」
「本当か!」
「でも、大変なの。お兄様に捕まって、国に連れ帰られるって言ってたわ。リンってお兄様と仲が悪いの?」
憂焔は少し考えたあと、首を横に振った。
「俺が鈴国に行ったときに少しだけ姿を見たけど、むしろ逆だな。兄上はリンを大切に思っているようだったけど」
「どちらにしろ、連れ帰られてはまずい。ハル、案内してくれ」
「言われなくてもそうするわよ」
ハルはべっと舌を出してから身を翻し、二人の前を駆け出した。
秋蛍と憂焔は顔を見合わせてからハルのあとを追って狭い小道に入り込んだ。