「おい、ハル…」


「待て。ハルは今ここにいない」


ハルの肩に手を伸ばそうとした憂焔を、秋蛍が制した。


憂焔は怪訝に眉を寄せて秋蛍を見た。


「いないってどういうことだよ?目の前にいるじゃないか」


「いるのは抜け殻だけだ。おそらく…、リンがハルを呼んだんだろう」


「リンが?ハルを呼んだ?」


憂焔は目を丸くし、再びハルに視線をやった。

相変わらず動かないままで、どこを見ているというわけでもなく蒼い目を見開かせている。


「リンは、少しは力をつけたらしいからな。ハルに接触するのもできないわけじゃない…」


だが…、と秋蛍は表情を曇らせた。


「教えてもいないことをしてでもわざわざハルと連絡をとろうとするということは、厄介なことになっているのかもしれない」


「なんだって!」


険しい声を上げる憂焔に、秋蛍は首を横に振った。



「今はハルに任せるしかないな。ハルが戻ってくるまで待つしか、俺たちにできることはない」



「くそ…、リン……。無事でいてくれ」