二人のやりとりを見ていたハルが、ぴょんと寝台から降りて秋蛍の着物を引っ張った。
「心配だよ、もう薄暗くなってきたのに。探しに行こう」
心配そうに眉を下げるハルに秋蛍は頷き、ちらりと憂焔を見た。
それに気づいた憂焔も頷いた。宿屋の主人に香蘭が戻ってきたら部屋で待たせるように託け、宿を出た。
「でもなあ、どこへ行くって言うんだよ。皆目見当つかないぜ」
憂焔は頭の後ろで手を組み、秋蛍を睨みつけた。秋蛍は憂焔を横目でちらりと見たが、何も言わないで歩き続けた。
少しむっとした憂焔が文句を言おうと口を開きかけたとき、率先して前を歩いていたハルが驚いた声を出して、急に立ち止った。
「おっと!」
立ち止ったハルに危うくぶつかりそうになったのを、憂焔は寸でのところで横によけた。
「ハル?どうかしたのか?」
声を上げたきり動かなくなったハルを覗き込むと、ハルは目を開いたまま、まばたきもしないで固まっている。
憂焔は首を傾げてハルの目の前で手を振ってみたりしたが、それでも動かない。