笑い転げるハルを睨み、憂焔はたて掛けていた剣を手に取った。
「その銀色、高く売れるだろうな」
「え…」
ハルは笑みを凍りつかせ、さっと逃げ出そうとしたがそれより憂焔がハルを捕まえるほうが早かった。
「きゃあああ!女の命になんてことするの!」
「いたずらっ子にはお灸をすえないとな」
「…何をしている」
戸のほうから呆れた声が聞こえ、二人同時に振り返ると、やはり呆れた顔をした秋蛍が立っていた。
「何って、このくそガキをこらしめてやってるんだよ」
「ガキじゃないもん」
むっとしながら憂焔が返すと、それを聞いたハルが口を尖らせた。
秋蛍はため息をついた。
「ガキ相手に何をやってるんだ」
「秋蛍も人のこと言えないよね」
「やっぱり俺も手伝おう」
「ひどい!鬼!鬼畜ー!」
ハルの髪を鷲づかみにして憂焔の手から剣を奪い、本当に髪を切断しようとしている秋蛍を、憂焔は呆気にとられて見ていたが、はっとあることに気づいた。
「秋蛍、リンは?」
髪に剣をあてがっていた秋蛍はぴくりと反応し、憂焔のほうを向くとハルを寝台の上に放り出した。
「さあな。逃げた」
「お前まさかまたあいつに無茶なことさせたんじゃないだろうな!」
「てっきりここに戻ってきてるかと思ったんだが、まだ帰ってないのか」
「無視するな!」