「なっ!まさかお前!」


「きゃ」


藤松は香蘭の右手を掴みあげ、ぎりぎりと締め付けた。


鏡が香蘭の手から離れ、地面の上に転がり、光をうけて煌めいた。


「まさか初めからこれが目的で…、くそ!侮った!」


藤松は鈴のたくさんついた輪を取り出し、シャン、と鳴らした。


珀伶は何をしようとしているのかわからない、といった様子で二人を見ている。


もう一度藤松が鈴を鳴らすと、香蘭はびくっと肩を跳ねあげた。



鈴の音とともに流れてきたのは、昨日香蘭に向けられた、珀伶の冷たい視線、声、表情。



「いや、やめて…!」


香蘭が震えだしたのにも構わず藤松は何度も鈴を鳴らした。


香蘭は耳を塞ごうともがいたが、右手は藤松に封じられたままでどうすることもできず、香蘭の見たくない光景がどんどん頭の中へ流れ込んできた。



珀伶が香蘭を殺そうとしたあの夢の映像まで浮かび上がって、とうとう香蘭は泣きだした。