結局、淳ペーに押し切られるようにバレー部のマネージャーをやらされた。
ただ、ここは部員が多いし、マネージャーだって私を入れて4人もいるから融通が利いた。
所帯が大きいのって、いいねぇ。
淳ペーとは同じクラスにならなかったけど、私のクラスにはバレー部の男の子がいて、結構その子と話す機会が増えた。
高橋 雅也(たかはし まさや)くん。
背は176センチ、主にセッターとして活躍している。
「実咲ちゃんは淳と仲いいよね?」
「腐れ縁なんだよね~。
アイツの所為で平凡な私の人生にバレーボールが割り込んで来た!!」
「そうなんだ(笑)」
いつもニコニコと笑ってて温和な印象の雅也くん。
淳ペーとも一番仲がいいかもしれない。
同じクラスだから、雅也くんと一緒にいる時間が多くなった。
反面、淳ペーとは部活以外で接する事も減った。
元々、遠い距離を通学する身。
最寄駅が同じなのもあって、一緒に登下校してたんだけど。
淳ペーに彼女が出来たから、やっぱマズイかと・・・。
不特定多数に誤解されるのもイヤだったけど、最愛の彼女に疑われるなんて絶対にイヤでしょ?
そんな訳で、自主規制を始めた私。
余計な事に首を突っ込みたくないもん。
そんな理由で淳ペーとは部活の接触のみ。
部活帰りは仕方ない。
でも、なるべく淳ペーと二人きりになるのは控えた。
とはいえ、同じ電車なので避けようもないけど。
こんなに私が企業努力してるのに・・・。
またしても2週間。
高校デビューして初の彼女とは、2週間で別れました。
それでも、すぐに次が現れる。
2人目の彼女とは1ヶ月ちょいもったでしょうか。
だけど、やっぱり来るんだよね、破局が・・・。
そんな繰り返しが何度も続いた。
ひょっとして淳ペー。
あんた、人としてダメなんじゃないの!?
思わず声を大にして言いたくなる程。
年が明けて、3学期を迎えた頃には
「俺、3週間だと思うな」
「いやいや、1ヶ月はもつだろ?」
「俺は最短コース。2週間」
部活でも騒がれる程に。
高校に入って、もう何人目かも分からない彼女の存在に、部員たちは好き放題言うのだった。
二年に進級した。
今度は淳ペーと同じクラスに。
このクラスは、このまま持ち上がりなので、実質卒業まで一緒だ。
雅也くんは隣のクラスになってしまった。
「せっかく実咲ちゃんと仲良くなれたのに残念だなぁ」
そんな嬉しい台詞まで言ってくれる。
「何言ってんの! 部活で一緒じゃない?」
「だよね、だよね!? でもさ、淳と同じクラスだからさ、実咲ちゃんを淳に取られちゃう」
「はぁぁ・・・淳ペーねぇ・・・。
アイツの尻拭いだけは勘弁して欲しい」
「実咲ちゃん、色気ナイ発言(笑)」
「へへへ。かたじけない!」
「褒めてないって!(笑)」
「えー、誰が俺の尻見たいって?」
突然混ざって来る淳ペー。
誰もアンタのお尻なんか見たがらないわよ!!
あ、でも彼女なら見たいと思うのかも・・・?
「雅也はイイよなぁ~。転校生、お前のクラスやろ?あの超絶美少女!」
「ああ、小西さんだっけ? 一緒だな」
2年になって転入してきた女の子。
小西 恭子(こにし きょうこ)さん。
「ちょっとミステ~リアスな雰囲気で良くね?」
「そうか? 俺はそうでもないけど」
ふむふむ。
淳ペーは小西さんが気になってるんだ?
雅也くんは興味無さげだけど・・・。
「めっちゃ美人やのに頭エエんやって?」
「ああ、この前の実力テスト、学年5位とかって噂」
ヒェェ。
何者ですか!?
見た目が綺麗で頭も良い?
二物を与えるなんて・・・神様って不公平だな!
でも、まぁ、私とは縁が無い人だから、どうでもいいや。
その、小西さんと言えば・・・
転入早々、3年生と付き合い始めた。
転校してすぐに彼氏!?
しかも、お相手は、北高の生徒会長サマ。
『北高の星★』と謳われ、頭だけじゃなく見た目もグーな生徒会長。
まさに美男美女のカップル、誕生!
いいなぁ、小西さん。
今までの人生、順風満帆だったんだろうなぁ。
そして、きっとこれからも・・・。
私は彼女とは別の種類の人間だもんね。
私は私なりに地道にやって行きますよ。
しかし・・・
美男美女カッポゥは僅か半月程で破局してしまった。
まぁ、会長は受験生ですし?
当然と言えば当然かも。
だけどだけど、別れた直後に別の人と付き合い始めた小西さん!
今度は2年生だけどね?
結構ハートは図太いの?? 見た目は壊れそうなガラスのようだけど・・・。
それにしても・・・
こんな短期間に相手が替わっちゃうなんて。
まるで誰かさんみたいじゃありませんか!!
そういえば最近、淳ペーが誰かと付き合ってるのを聞かないな・・・。
今は誰にも告られてないんだろうか?
まぁ、私が気にしても仕方ないんだけどさ。
それからも淳ペーの隣に女の子が並ぶ事は無くて・・・。
なんだか拍子抜けデス。
そんなある日、顧問に呼び出され雑務をこなしていたら、すっかり遅くなってしまった。
練習はとっくに終わっていて、淳ペーは用事があるからと先に帰ったようだった。
「実咲ちゃん、お疲れ~!」
「あ・・・雅也くん」
ひょっとして待っててくれた?
いや、まさか・・・そんな事無いよね?
「駅まで一緒に帰ろう?」
「うん」
断る理由も無いしね。
駅までの道、雅也くんとは他愛のない話で盛り上がった。
「そういえばさ~、最近淳ペーって誰とも付き合ってないよね?
どうしたんだろね??」
「淳!? あぁ、そうだね。
なんか最近は告られても断ってるみたいだよ」
断る!?
淳ペーが??
「なんで断るの? 今まで来る者拒まずだったじゃない?」
「確かにそうだよね(笑)今まではね・・・」
「今は違うの?」
「どうやら淳のヤツ、本気で好きな子が出来たみたい」
え・・・?
淳ペーに好きな人?
「マジで!?」
「うん。マジも大マジ。
その子に似合う男になる為に、今は恋愛は封印してるんだってさ。
まぁ今までだって、男女の恋愛って感じじゃなかったけど(笑)」