敦は、今度は両肘を

机の上に乗せると、

手のひらに顎を

ちょこんと乗せて

私を見つめ始めた。


あまりに近い敦の顔に、

心臓が飛び出てしまいそうなほど

激しく暴れる。


「な、何?」


「キミの名前って、何さん?

 せっかく知り合ったんだしさ」


敦の言葉で少しだけ心が沈む。


そうだ。


今の敦には私のことを、

名前も全て記憶にないのだ。


訊かれて当然なことなんだよね。


私は敦に分からないように

息を静かに小さく吐いてから

口を開いた。


「私は……」


それとほぼ同時に、

始業のチャイムが鳴り響く。


「あ、残念。じゃあ、またね」


そう言うと、

敦は右手を軽く振って

教室の後ろの席へと

移動していった。