「今日はここまで。

 来週までに自分の意向を

 固めておくように」


終業のベルが鳴るのと同時に、

川岸教授が早口に言うと

足早に教室を後にした。


大学は高校までと違って

開始や終了の際の

団体挨拶がない。


教授が締めればあとは学生の自由。


それが私にとって

すごくありがたく

とても楽に感じていた。


ふと教室の後ろへと視線を向ける。


その先に移るのは、

遅刻してきた敦。


思い切って声をかけてみようか。


しかし、

声をかけたからと言って

相手が私を覚えているとも限らない。


でも、やっぱり……。