10年もの間、

ずっと待ち続けていた

敦との再会。


それがこんな形で

実現するなんて

思ってもみなかった。


募りに募った敦への想いが、

一粒の雫になって

目からぽたりと落ちる。


その雫は敦への想いの上で

じんわりとにじんで大きくなる。


「君、どうしたのかね?」


川岸教授に肩をぽんと叩かれて

優しい声で訊く。


どうやら

一番前に座っている私の姿が

川岸教授の目に入ったようだ。


私は咄嗟に目をこすると

川岸教授の目を

真っ直ぐ見ながら、

「大丈夫です。すみません」

と言って頭を軽く下げた。