教室の後ろの席に

座っているであろう敦。


10年間の空白が

嘘のようなこの状況に、

私の胸はどんどん高鳴り

激しさを増していく。


川岸教授の話も、

今の私にはただの

BGMにしか聞こえない。


穏やかな口調が

さらにそれを心地いいものに

させている。


時々黒板に書く文字を

ノートに書きつつも、

私は口に出せないこの想いを

その端っこに書き留める。


『敦? 

 ここにいるのは本当に敦なの?』


『敦、私のこと、気付いてる?』


『敦に話したいこと、

 いっぱいあるんだよ?』


『敦は、

 私との再会に喜んでくれてるの?』


『敦、敦……』


書き留めるたびに

私の胸がぎゅっと締め付けられる。