私を含む全員の目が

その男子学生へと向けられる。


はあはあと

息が乱れたままうつむく

その学生は、

川岸教授に向かって

さらに深く頭を下げる。


「君、5分の遅刻ですよ。

 今回は見逃しますが、

次回からは気を付けるように」


川岸教授はやっぱり

穏やかな口調でそう言うと、

その学生に頭を上げるように促した。


その言葉にホッとしたのか、

学生がふと顔を上げる。


その瞬間、

私の中に電流の様なものが

駆け巡った。


見覚えのある

釣りあがった凛々しい目。


きつそうな印象を

与える目からは、

それに反して

ふんわりとした優しさが

滲み出ている。