川岸教授のこの微笑み、

なんだか見ていると

ホッとするものがある。


さっきの話によると、

あと1人学生が足りないらしい。


ゼミの初日に

遅刻してくるなんて、

なんていい加減な人なんだろう。


こう時間にルーズな人、

私はどうしても苦手だ。


例え他に優れた点が

あったとしても、

全てにおいて

ルーズな気がしてしまい、

その人の評価を

かなり下げてしまう気がするから。


川岸教授は腕時計をちらりと見ると、

「まぁ、その学生を

 待っていても仕方がないので、

 早速、ゼミを始めましょうか」

と言い、私たちに背を向け

黒板に何かを書き始めた。


その時だった。


思い切り良く

教室のドアが開かれたかと思うと、

ぜえぜえと息を乱しながら

川岸教授が待っていた

その学生が入ってきた。


「お、遅れてすみません」