私の卒業論文の担当、

川岸文夫(かわぎし ふみお)

教授。


日本古代史が専門で、

実は私の籍がある

文学部の学部長でもある。


そんなエリートの

川岸教授のゼミを受講できるのも、

ある意味、

ラッキーなのかもしれない。


噂によると、

この川岸教授は何に於いても

とても優しい、らしい。


その優しさとやらに、

私は少しだけ期待している。


川岸教授が

小ぢんまりとした教室を

見回しながら指をさし始めた。


どうやら、

学生の数をカウントしているようだ。


「……あと、1人

 いるはずなのですが。

 おかしいですね」


そう言いながらまた微笑む。