授業開始のチャイムが鳴り響く。


ふと後ろを振り返ると、


それまで全く気付かなかったが

学生数人がぽつんぽつんと

席に座っていた。


どうやら、

このゼミの受講者は

女が多いらしい。


チャイムからしばらくして、

担当教授がゆったりとした歩調で

入ってきた。


白髪混じりで髭を生やした

おそらく60代前半であろう教授は、

新学期に合わせてだろうか

髪型がきっちりと

切りそろえられている。


教壇の上に持ってきた資料を

どかっと置くと、

教授はこほんと一つ咳払いした。


「おはよう、諸君。

 川岸ゼミへようこそ」


そう言うと

教授はほんのり微笑んだ。