「あれ……。

 部屋、間違えたかな」


あと5分ほどで始まるというのに、

教室にはまだ誰一人もいなかった。


掃除のおばさんが

空気の入れ替えを

してくれたのだろう、

窓が少しだけ開けられていて

教室特有のこもった匂いは

しない。


もう少し時間が経てば、

きっとみんな揃うだろう。


そう考え、

私は一番前の左端の席へと座った。


窓側の席で、

外の光が一番入る明るい席。


ちょっと気を緩めたら

すぐに睡魔に襲われて

しまいそうだが、

太陽の光が好きな私は

いつもその席へ座るようにしている。


「担当の先生、

優しい人だったら

いいんだけどな……」


未だ会ったことのない先生に

一抹の不安を感じながらも、

私はただぼうっと窓の外を眺め

時が過ぎるのを待っていた。