始まりは17歳の春。

田畑だらけのド田舎に生まれ育った私は青い空と畑しかない景色をボーっと見つめていた。

美術室の窓際の古びた茶色い椅子。

ここは部長である私の特等席だった。

それを知っている数少ない部員は座ろうともしない。


「水沢七海さん!」

「…………あ、こんにちは」

「あなたまたボーっとしちゃって」

「次に描くものを考えてたんですよ」


顧問の川谷先生は優しく笑い私の仕上げたばかりの作品を眺める。