それでも、その言葉だけで分かってくれる様な気がした。
苑朶さんは皐月くんの事を。
皐月くんは苑朶さんの事を良く知っている気がしたから。
「同じじゃ無いよ、馨は」
「え?」
答えたのは皐月くんだった。
「だからマスターは俺とは違う。
そう言ってんの」
それは、則ち苑朶さんは吸血鬼では無いと言う事だ。
でも、だったら何で──
「苑朶さんは皐月くんが吸血鬼だって事、知ってるの?」
店内にいるお客さんの目を気にしながら小声で皐月くんに問い掛ける。
皐月くんは手にしていたらしいお酒の瓶のコルクを抜くと中身を丸い形のグラスに注ぎながら答えた。
「その方が何かと楽だったから」
「楽…?」
「そう」