店の内側、則ちカウンターの内側は立派な棚が立ち並んでいて
中には酒瓶が所狭しと詰められていた。
マティーニ、テキーラ、ジン。
聞いた事のある銘柄のラベルがずらりと並ぶ。
二十歳になったら私もこんなお酒をたしなんだりするのかなぁ?
まだ見ぬ未来に思いを馳せていると。
『君が依茉ちゃん?』
突如、名前を呼ばれて私は我に返った。
いけない、一人の世界に入ってた!
辺りをきょろきょろと見まわすとカウンター越しには数人お客さんが座っている。
店の奥にも椅子にふんぞり返って
お酒が入っているであろうグラスを
ぐびぐびと口元に掲げているおじさんがいた。
そうだ、お客さんがいたんだ。
剰りにも店の中をじっくりと観察し過ぎて、動くものが見えていなかった。