皐月くんが扉が開けるといきなり眩しい光が私を襲って、思わず目を細めた──。
…なんてお決まりの展開が待っているとばかり思っていた私は思わず拍子抜けしてしまった。
実際は扉向こうの光が視界に入って来ても瞬きさえしなかった。
何故なら扉の向こうの店の中は歩いて来た通路よりも少し明るい位で薄暗さに何等変わりは無かったから。
皐月くんは無言で中に入って行く。
私もそれに続いた。
店の中が薄暗いのはそれなりの場所だからで、初めて味わう雰囲気に自然と身体が硬くなる。
店の中に目を向けると私が今佇むL字型のカウンターの外にはテーブルを囲む様にして赤い丸椅子が間隔を空けて並んでいる。
店の奥の方には、これまた丸い茶色のテーブルが赤い椅子とセットになって点々と散らばっていた。
テーブルは店の蛍光灯を浴びて艶やかに光っている。
まるでニスが塗ってあるかの様だ。