もう10歩程歩いて通路を右に曲がると其処には先程のスタッフルームと同じ色をした扉が現れた。



薄暗い通路を照らす明かりは天井に危なっかしく紐で取り付けられた
ぶらぶらと揺れる電球だけだった。



扉を軽く浮き光らせ銀色のドアノブが視界をちら付く。



「この先が店のカウンターに繋がってる。

入ってみる?」



「うん!」



勿論の如く即答した。



皐月くんはそこでやっと掴んでいた私の手を離すと、その手でドアノブをまわした。



「客の相手しなくちゃいけないから、依茉には構ってやれないけど」



「うん、分かってる」



それを承知で店にお邪魔する事に決めたんだから。



それにはっきり言って私は店の雰囲気に慣れるのにも時間が掛かりそうだ。



バーなんて初めて来る場所だから。