狭い通路をどんどん進んで行くと右手に小さな扉が現れた。



じっ、と扉を見ている私に


「其処はスタッフルームだよ」



皐月くんが説明してくれた。



“当たり前だけど、休憩時間以外は入らない。
ま、俺は休憩時間も其処には行かないんだけどね。

…むさ苦しいからさ。”



なんて流暢に話してくれる。



「ふーん…」



私は灰色のペンキで色付けしてあるスタッフルームの扉を今一度見つめた後、また前を向いて歩いた。



通路には何に使うのか分からないけれどペンチやロープ、螺、他工具用品が散らばっていた。



その中に混じってゴロゴロとお酒の瓶が何本か転がっている。



中には瓶の中のお酒を飲み切っていないのか、コルク口から中身が溢れて床を濡らしているのもあった。



「こんなんだけど、店の中は案外綺麗だから」



皐月くんは転がっている瓶を邪魔そうに跨いだ。