こうして場所を教えて貰い、店の前に辿り着いた私。
少しだけ震える足を、しゃんとさせる為に深呼吸をする。
吸い込まれた空気にただならぬ匂いを感じたのは、きっと気のせいじゃ無い筈。
それでも、入店を決めた私は鞄の中から携帯を取り出した。
取り敢えず、店の前まで来た事を皐月くんに連絡しなくちゃ。
そう思い立った事からだった。
さっきの発信履歴から再び電話を掛ける。
トゥルルルル、トゥルルルル…
回線を繋ぐ音がしばらく聞こえた後、通話状態になり皐月くんと繋がる事が出来た。
『もしもし』
「依、依茉ですっ…」
恐々に名乗ると、
『依茉!?
何やってんの、お前。
今何処にいる?』
皐月くんは少し苛々した様な口振りで問い掛けてきた。