──黒い店。
それは店の雰囲気を表す様な名前では無かった。
表向きではバーとして営業しているが、問題は常連客。
明らかに“普通じゃ無い”部類の人達が通っている。
それは俗に言うヤクザだったり、お水で働いている人達だったり。
質の悪い客同士の取引場所としても使われているみたいだ。
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「絡まれたら、ろくな事にならないよ。
奴等に捕まったら二度と帰っては来れないと覚悟しても良い位だ」
店の内情を断片的に話してくれた後、鍋島さんは私を見つめる視線に影を落とした。
“奴等”それは常連客を指しているのだと言う事位、安易に想像する事が出来た。
「それでも依茉ちゃんは其処に行くのかい?」
一瞬、迷った。
疑問系で問われているけれど、これは鍋島さんに止められている。