まだ現実を受け止める事が出来無い。
信じたく無い、皐月くんが吸血鬼だなんて。
少し冷たいだけの美形な男の子。
そう、信じていたい。
首筋に目を落とした。
本当に噛まれたなら傷痕がある筈。
本当に血を吸われたなら──
「あれ…?」
だけどそこには傷痕処か噛まれた跡すら見当たらない。
急いで反対側の首筋も確認する。
皐月くんに噛まれた跡が、あるかどうか。
それでも、
「…無い」
皐月くんに噛まれた跡なんて見当たら無かった。
本当は私、血なんて吸われていないんじゃ…
そんな思いが芽生え始めた時だった。
「“無い”って何が?」
ぽかん、と呆気に取られている私の間抜けな顔を皐月くんは嫌そうな目で見て聞いてきた。