「うん。もう平気~」


よかった、直ったんだな。


───キーンコーンカーンコーン…


すると、丁度よく授業終了のチャイムが鳴り響いた。


「…あ、じゃああたしは教室戻るねー?」


さくらがベッドからひょいっ、と降りた。


「あ、ああ…」


もう少し、話したかったな。




保健室から出ていこうとするさくらが、クルッと俺のほうへ振り返った。


なんだ……?


「翼くんと話すの楽しかった!また話そうね~」


ニコッと笑いながらそう言う。


………っ…。


コイツは、天然で小悪魔だ。


あんな顔で、あんなこと言われたら
男はツボる。




「……また話そうな?」


つか、話しかける。


絶対……さくらが俺のこと好きになるようにする。


「うん!バイバイ!」


そして、さくらが手を振りながら去っていった。


さくら……


可愛いな……。


この日からだった、俺がこの天然で、小悪魔な彼女にハマったのは。




《さくらside》


「ただいま~」


「あっ、さくら~!もう平気なの!?」


「うんっ!少し寝たらよくなった!」


教室に戻ると、ナミちゃんが待っていた。


「保健室でヒマじゃなかった?誰もいなかったんでしょ?」


ナミちゃんが聞いてくる。




誰もいなくはなかったんだよね…。


「1人、いたよ…。その人と話してたからヒマじゃなかった!」


「そうなの?誰がいたの?」


「えっとねぇ…安斎翼くん、っていう人~!」


カッコよかったなぁ、翼くん…。


この学校に悠ちゃんと同じくらいカッコいい人がいるなんて……。




「はぁ!?安斎翼!?」


「へっ?」


な、ナミちゃん……?


どうしたの?


ナミちゃんが急に嫌な顔をしだした。


「うわー…安斎翼とかないわ…」


「……?」


「さくら、本当に安斎とは話しただけ?」





「う、うん……」


「なにもされてない!?」


ナミちゃんは真剣な顔をしている。


「なにも、されてないよ?」


本当に話しただけだもん。


「はぁ……ならよかった…」


「どうかしたの?」




ナミちゃんがこんなに真剣になるなんて……。


「もう、さくらが安斎に何かされたらどうしようかと思った…」


はぁ、と安堵の溜め息を吐きながら
ホッとした顔をした。


なにかされる……?


どうして…?


「ナミちゃん、なんであたしが…翼くんになにかされるかと思ったの…?」




翼くんがあたしになにかするなんて。


ないよ~、そんなこと!


「はぁ……さくらは天然だからなぁ」


「あ、あたし天然じゃないよ!」


天然なわけないよ!


「はいはい、わかったから」


呆れたようなナミちゃんは、そう流した。